SPECIAL HARDWARE EDITION 

国産メーカーの雄の「今の姿」を伝える特別企画

文●安保 亮 Akira Ambo ヤング・ギター編集部 YOUNG GUITAR 機材撮影●竹澤 宏 Hiroshi Takezawa

dragonfly進化を続けるオリジナリティ

前編

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常にミュージシャンたちの声を近くで聞きながら、現代の音楽に合わせて自らをアップデートしてきたドラゴンフライ。そんな進化を続けるブランドの多彩なモデル群の一部を、ここから10ページに渡って紹介していこう。

※本サイトでは、記事を前後編に分けて掲載します。

戸谷達明 (株)ハリーズエンジニアリング代表取締役

ミュージシャンに常に寄り添う真摯な姿勢

 戸谷達明氏がハリーズエンジニアリングの前身である楽器販売会社を設立したのは1991年のことで、自らの理想を具現化するギターを生み出すためドラゴンフライというブランドを立ち上げたのは1999年。そして本格的にオリジナル・モデルを販売し始めたのが2000年なので、今年はドラゴンフライにとってざっくりと言って20周年ということになる。同ブランドの素晴らしいところは常に若いミュージシャンたちの声を聞きながら研究を重ね、製品をアップデートし続けていることだ。今回の特集ではそんなドラゴンフライの「今の姿」をお伝えさせていただきたいが…、まず最初に主なギター・ラインナップを、氏に語っていただくところからスタートしたい。

YG:ドラゴンフライにとって、最もベーシックなモデルと言えばどれになりますか?

戸谷達明(以下TT):このブランドで最初に売り出した“HI STA”で、今は“HI STA(ORIGINAL STYLE)”という名前になってます。モデル名はいわゆるSTシェイプのハイ・スピード版のような意味合いですね。当時流行していたハイ・エンドなカスタム・ギターの路線で、小さめのボディーに400Rの指板、ステンレス・フレット、それに当時は一般的じゃなかった2点支持のシンクロ・タイプ・トレモロを作ったり、テンション・ピンを排除してアーミングを柔軟に行なえるように、ペグはゴトーさんに頼んで“Magnum Lock”のポストの高さを弦ごとに変えてもらったり。そういうスペックは今は定番化していますけど、当時は珍しかったんですよ。後に「通常サイズのボディーがほしい」というリクエストに応えて“HI STA FULL SIZE”を作り、他にもボディー・トップにメイプルなどを貼った“HI STA CUSTOM”があったり、ドラゴンフライなりのヴィンテージ・スタイルを追求した“M STA”があったり…という感じに展開してます。

 生まれた順で言うと、次に作ったのは“BORDER”だったと思います。現在のようなラウド系のアレンジにしたのはここ数年ですけど。TL風でもありダブル・カッタウェイっぽくもある、そういうものを狙ってデザインしたんですが、最初は「こんな格好悪いボディー・シェイプでは駄目だな」と思っていたんですよ。でもたまたま楽器店さんにお見せしたらすごく良いと言われ、実際に何本か作ってみたらすごく好評で。

HI STA CUSTOM

M-STA  FULL SIZE

BORDER

B6(792mm Scale 27F)

YG:ドラゴンフライと言えば通常よりも長いスケールを採用したモデルが印象的ですが、“B6”はその先駆けとなったものですよね?

TT:そうですね。とあるアメリカのミュージシャンで、「チューニングを低くしたいのにピッチが合わない」と言っている人がいると聞きまして、じゃあダウン・チューニング専用機を作ろうと。確か2001年頃だったと思いますけど、当時は市販されていた弦のゲージにあまり種類がなかったんですよ。プレーン弦で.018ぐらいがギリギリで、そういう制限の中で最大限に長くできる792mm(31インチ)のネックを作りました。5フレットにカポを付ければフェンダー・ジャガー(609.6 mm=24インチ)と同じ、みたいなスケール感ですね。ただ2000年代の半ばになると、各弦メーカーが色々なゲージを作り始めたので、より太い弦を使えばそんなにスケールが長くなくても安定して低い音を出せるようになったんです。で、“B6”ユーザーのあるギタリストが「3フレットにカポを付けて使っている」と言っていたので、じゃあ3フレット分短くしたネックを作りましょうと。それが666mmという長さ。

YG:今やドラゴンフライの代名詞ともなった、666 (トリプル・シックス)になるスケールですね。

TT:クラシック・ギターで昔使われていたスケールでもあるんです。最初はラウド系のギタリストを狙ったわけでもなかったんですが、「チューニングを落として使うと良い」という評判が口コミで広がって、今に至りますね。“B6”からはもう1つ派生していて…うちのギターを長年使ってくれているPABLO(Pay money To my Pain、POLPO、RED ORCA他)君と話していた時、「“B6”はロー・ポジションの位置が遠い」と。ハイ・フレットは弾かないからどうでもいいと言うので、じゃあネックをボディーに深く挿そうかということになり、それが“ZONE-B”になりました。

ZONE-B (792mm Scale22F)

MAROON CUSTOM666

SOTTILE CUSTOM648

PREMERO TOM

YG:“MAROON”も歴史が古いモデルですよね?

TT:2001年ぐらいには既にあったかもしれないですね、昔はもうひと回り小さかったですけど。シングル・カッタウェイとダブルの間の子みたいな感じで、ギブソン的な空気感を持つものが定番としてあった方がいいと思ったんです。最初に作ったものが栗まんじゅうみたいな見た目のラミネイト・ボディーだったので、じゃあ名前はマロン=“MAROON”にしようと。

YG:対照的に小振りなボディーが特徴的な“SOTTILE”はいかがですか?

TT:昔いたスタッフが、軽いギターを作りたいと言ってきまして。ボディーの質量を軽くすると鳴りは柔らかく広く大きくなり、低音が案外グッと出たりするんですよ。言ってみればSGのような発想を、STシェイプで作ってもいいだろうということで、35mmのボディー厚に設定して作りました。モデル名はイタリア語で「薄い」とか「細い」といった意味ですね。

YG:そして最新機種として、今回“PREMELO”というモデルが発表されました。

TT:ドラゴンフライはハード系やラウド系のギタリストが色々使ってくれていますけど、そんな中で「ポップで可愛くてみんながほしがるようなギターもないと駄目なんじゃないか」と、PABLO君が提案してくれまして。名前はスペイン語の「premero(最初の)」から来ていて、そもそもブランド立ち上げの前に僕が最初にデザインしたギターなんですよ。うちの製品は大きめのものが多いので、648mmで女性や小柄な人でも持ちやすいものを…ということで、改めて引っ張り出してきました。今はSSHレイアウトでチューン・O・マティック・ブリッジのものだけですが、3シングルやトレモロ搭載ヴァージョンなども作ろうと思ってます。

 

(問)ハリーズエンジニアリング 

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ヤングギター誌 2020年8月号掲載

dragofly

進化を続けるオリジナリティ   後編

2021.06