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左から

SOTTILE CUSTOM 666

★35mmという薄型ボディーを特徴とする“SOTTILE”。本機はバック材に定番のアッシュを用いつつ、トップに玉目が特徴的なスギを組み合わせた珍しいモデルだ。またリヴァース・ヘッドを採用することで、ややルーズな低音域とタイトで切れの良い高音域を獲得。(価格:オープン・プライス/市場想定税別価格¥415,800)

HI STA (ORIGINAL STYLE)

★仕様や価格は右ページの試奏レポートを参照。

SOTTILE CUSTOM 7st 666

★薄型ボディーに666mmスケールの7弦ネックという組み合わせながら、ネック落ちしない絶妙なバランスに設計。ボディー・トップとヘッドに配されたバール・メイプルの豪快な杢目が、エキゾティックな魅力を醸し出している。(価格:オープン・プライス/市場想定税別価格¥428,000)

メイン試奏モデル : HI STA (ORIGINAL STYLE)

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Yoma(The Winking Owl)による試奏インプレッション

 ドラゴンフライを使ったのはインディーズ時代に出したミニ・アルバムのレコーディングをする時、地元の友達に“BORDER”のSSHモデルを借してもらったのが最初で、エンジニアさんからもピッチが良いと評価が高かったんですよ。その後自分のモデルを作る時に、ソープバー・タイプのピックアップを3つ搭載する形にしてもらいました。The Winking Owlはわりと音楽性の幅が広く、基本的にアンプの設定を変えずに手元だけで色々なサウンドを出したいと思ったのと、ラウドな曲をいわゆるハムバッカーじゃない音で弾くのが好きなので。

 今回試奏した“HI STA(ORIGINAL STYLE)”は同じように3ピックアップのモデルで、シングルコイルらしい響きがありつつ、ドラゴンフライならではの張りのあるサウンドだと思います。ピッチの安定感があるおかげか、全体的にスッキリしていますね。クセが強くないので、どんな音楽でも使いやすいんじゃないでしょうか。自分たちのバンドならポップな曲でゆったりしたリードを弾いたり、1弦から6弦まで鳴らすテンション・コードを使う場合に合うと思います。

◀Yomaが最初にオーダーした”BORDER(右)は、特にシングルコイルらしい響きがほしい時に使用。”MAROOM”

(左)は特別に7弦用の大きいボディーを使って作ってもらったもの。

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▲左側からハイ・パス/ロー・パス・フィルター、ミドル・ピックアップの混ぜ具合を調節するSPBサーキット、(上)ヴォリューム、(下)5ウェイ・ピックアップ・セレクター。

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[SPECIFICATIONS]

●ボディー:ライト・アッシュ

●ネック:ハード・メイプル

●フィンガーボード:ハード・メイプル

●ジョイント:ボルト・オン

●フレット数:22

●スケール:648mm(25.5インチ)

●ペグ:ゴトー“SG381-07MGT”

●ブリッジ:ゴトー“510TS”

●ピックアップ:

  ドラゴンフライ“dfs-1”(ネック&ブリッジ)

   “dfs1R”(ミドル)

●コントロール:ヴォリューム、

 SPBサーキット、

 ハイ・パス/ロー・パス・フィルター、

 5ウェイ・ピックアップ・セレクター

●価格:オープン・プライス

 (市場想定税別価格¥270,000)

▲トレモロ・ユニットはゴトー製のシンクロナイズド・タイプを採用。2点支持型はヴィンテージ系の6点支持型に比べ、スムーズかつ安定した動きが特徴だ。

 左ページの掲載ギターに共通しているのは、いわゆるST系のダブル・カッタウェイ・シェイプを基本にしつつ、扱いやすい小型もしくは薄型のボディーを採用している点だ。インタビュー中にあった通り、“HI STA (ORIGINAL STYLE)”は20年前から存在する原点とも言うべきモデル。一方“SOTTILE”は2016年に発表された若い機種で、つまりブランド内の新旧両極端の顔触れ…という意味合いで見ても面白いかもしれない。

 試奏は前者“HI STA(ORIGINAL STYLE)”の方をメインに行なった。先述のインタビューの内容を改めて復習すると、弦高を低くしやすいフラット気味な400R指板、非常に減りにくいステンレス・フレット、柔軟にアーミングできる2点支持のシンクロ・タイプ・トレモロとテンション・ピンを排除したヘッド周り…という、テクニカル方向へ寄せた完全プロフェッショナル仕様を特徴としている。それでいてスッキリとしたスレンダーな外周や、流れるようなヘッドの曲線、木目が適度に透けるブロンド・フィニッシュなどからは優雅さも感じられ、ルックス面を犠牲にしていない辺りが実に粋ではないか。ちなみにボディーは小振りとはいえ、軽過ぎずちょうどいい重量バランスに収められている印象を受けた。

 まずジャラーンと大きく鳴らしてみると、その瞬間に現代的で凛としたトーンに魅了されること請け合いだ。2点支持のトレモロ・ユニットは決して操作性のみを追求しているわけではなく、支点が安定しているおかげでストレートかつピュアな弦振動が得られ、フィックスド・タイプのブリッジと同等の伸びやかさを実現。例えばヴィンテージ系のSTシェイプは、ピッチの適度な揺らぎも含めて個性と言えるが、本機の魅力はその真逆だ。アタックは超高速かつスムーズに立ち上がり、長くブレないサステインへとつながる。この辺りもやはり前項の“BORDER”同様、ギター全体の精密な作りが成せる業だろう。

 ピックアップはシングルコイルのど真ん中を押さえたサウンドで、周波数レンジは超ワイド。倍音にムラがなく超高域までスーッと広がり、一方低域も心地好く伸びる。特にネック・ポジションが絶品で、ブーミーになるギリギリまでローがありながらスッキリさを失わない。ピッキングに対するレスポンスは全ポジション共通して繊細で、ピックが弦に触れた瞬間の微細なニュアンスを見事に表現し、強弱の変化をダイナミックにトーンへ反映。解像度が極めて高いので、小さめの音量でも数歩前に出るような貫通力だ。

 コントロール部にはヴォリュームとハイ・パス/ロー・パス・フィルターに加えて、SPBと呼ばれる特別なノブを搭載。これは5ウェイ・ピックアップ・セレクターをミックス・ポジションにした時に有効になり、ブリッジ/ネック・ピックアップに対してミドル・ピックアップの音をどれぐらい混ぜるかを調節することができる。ミドルのシングルコイルは逆巻き&逆磁極タイプなので、ミックスすることで疑似ハムバッカー化でき、つまり音を太くしてノイズ軽減、ゲインもアップ…といった変化が得られるわけだ。いわゆるHSHレイアウトのサウンドとSSSレイアウトのサウンドを、滑らかに無段階でモーフィングできるとも言え、設定の幅は理論上では無限。これは特にシビアな音作りが求められるレコーディング現場において、絶大な威力を発揮するはずだ。

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ヤングギター誌 2020年8月号掲載

dragofly

進化を続けるオリジナリティ   前編

2021.06

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